棋士夫婦

私の夫は、囲碁棋士の高梨聖健(九段)です。
数えてみると現役の棋士夫婦は20組近くも。囲碁界では珍しいことではありません。

よく「夫婦で囲碁を打つことはあるのですか?」と聞かれます。

結婚前は、自分より強い人が家にいたら、いつでも碁のこと聞けるし、碁を打ってもらえる!ラッキー!そう思っていました。

遡ること、新婚ほやほやだった9年前。
気楽な気持ちで対局を挑んだ私。

初戦の負けこそ、夫の打つ手に感心し、素直に勉強になったと思えたものの、2局目3局目と負けが混んでくると、次第にそんな気持ちは消えていきました。
それに加え、勝ちが見えた時の夫の余裕の顔つきや手つきにイラっとし出し、チャンスがあったのにそれを勝ちに結びつけられなかった自分にも腹が立つ始末。
そして終局後もしばらく気分は最悪。

数日後、また負けが続いた私が、初めての一勝をあげ、あまりの嬉しさに、つい「やった~!」と大声を出してしまったことも。
途端に夫の顔が曇り、その後の空気はどんよりなんてもんじゃなく、会話すらない状況。

途端に夫の顔が曇り、その後の空気はどんよりなんてもんじゃなく、会話すらない状況。

それ以降、我が家では「碁を打とう」という言葉は消えました。

以前、「夫婦で対局するんですか?」の質問に
「夕飯がまずくなるので打ちません」と答えていた夫。
私も隣で大きく頷きました。
たとえ職業であっても、勝ち負けがついてしまうのは夫婦間では感情のコントロールが利かなくなり、挙げ句、亀裂にも繋がり兼ねないという結論が、わずか数ヶ月で出てしまったのです。

ただ、自分の手合い(試合)の内容を夫にみてもらうことはあります。
そして、自分では思い浮かばなかった手や、構想などを聞くと素直に「なるほど~」と関心し、夫への尊敬度も上がるのです。

これが、夫婦円満でいられる私たちの形なのかもしれません。

ちなみに、知人のアマ6段の紳士は、奥様に碁を教えたらぐんぐん上達し、数年後の今では夫婦でイベントや大会などに参加するほど、一緒に囲碁を楽しまれています。
何か秘訣は?と聞いたら
「怒らないことですね」との事。

私にはできませ~ん!

井澤秋乃 四段

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